![]() このパノラマX線写真は、十数年前に当院を訪れた患者さんの写真です。 患者さんは右上の奥歯と左下の小臼歯以外、全て歯髄(神経)を抜かれているか、 歯を抜かれています。それにもかかわらず、あちこち歯が痛いと仰ってました。 これって、本当に歯が原因なんでしょうか? 答えはNoです。 「歯の痛み」が神経を抜くことで止まるのであれば、治っているはずです。 多くの歯髄、歯を抜いているのに治っていません。 痛みは何が原因で起こっているのかをよく考え、もう一歩踏み込んで患者さんの話を訊いてあげる だけでも状況は変わったのではないかと思います。 ![]() 痛みのついて簡単に整理すると、痛みの伝達経路は2つあり、 1、組織の損傷による炎症性の痛み。体が傷ついたことを認識して出てくる痛みです。 2、「過去の不快な記憶」からフラッシュバックしてくる痛みです。 人間は過去の記憶や感情的なものにより「自分で」痛みを作ることができるのです。 歯科医師は患者さんが訴える痛みが 組織損傷による炎症性の「リアルな痛み」なのか、「過去の不快な記憶からくる痛み」なのか、そこを鑑別診断しなければなりません。 後者であった場合、歯の治療では治らない可能性があります。 上のX線写真のように、神経を抜いたのに治らないという悲劇的な結末を迎えることになります。 ![]() また、「歯」で感じる痛みにはいくつかあり、 代表的なものは 1、侵害受容性疼痛(炎症性)があります。 これは組織損傷によって起こった痛みで、物理的・化学的に体が傷つくことによって起こる痛みで、痛みの刺激を感知するセンサーである侵害受容器を通して感知される痛みなので、侵害受容性疼痛と呼ばれています。 2、末梢神経障害性疼痛 これは痛みを伝える神経自体に問題が起こってしまった時の痛みです。 中枢へリレーする神経自体にトラブルを抱えてしまった場合。例えば、三叉神経などに感染が起 こってしまった場合、または物理的にダメージを負ってしまった場合に末端にある歯は悪くなく ても、歯に痛みを感じてしまいます。 3、中枢神経障害性疼痛 歯の痛みは神経を通じて脊髄を通って中枢(大脳)に伝達されますが、その時に脳に認識障害が あったり、心の問題がある場合。実際には起こってないのに、過去の悪い記憶が蘇り、痛みを感 じてしまいます。例えばうつ病、PTSDなどがあります。 ![]() 例えばどんなに痛みが強くても、「体の痛み」だけであれば、ほとんどの場合、治療法があり、痛みの緩和が期待できます。怪我や病気などで起こる「急性の痛み」の多くがここに含まれます。 しかし、「脳の中で起こる痛み」の割合が高くなればなるほど、治療は難しくなっていくと言われています。 この脳の中で起こる痛みは不安やストレス、ネガティブな感情に関連して発症することが多く、ある嫌な出来事をきっかけに徐々にあるいは急激に痛みが始まるというのが典型です。 |