〜2021年1月更新〜 日本には歯科医院は68,000余の歯科医院があります。 それぞれが思うがままに治療するのではなく、証拠を照らし合わせて 様々な研究結果から正しい情報を整理して、それを信じて治療行為を行っています。 様々な情報が氾濫してますが、エビデンスの信頼レベル順に 1、システマティック・レビュー/メタアナリシス(統計解析) 2、1つ以上のランダム化比較試験(ランドマイズド・コントロール・トライアル:RCT) 3、非ランダム化比較試験 4、分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究) 5、記述研究(症例報告や症例集積研究) 6、専門委員会や専門家個人の意見 新型コロナでも、歯科の分野でも6の「専門委員会や専門家個人の意見」は バイアスがかかり易く、信頼度が低いものです。 現在最も信用度合が高い研究(current based evidence:CBE)基準 ・現在の治療法:1990年以降(それ以前は最新ではない) ・調査方法:以下の3つ以上の基準を満たしている (1)標本群:50歯以上 (2)調査期間:2年以上 (3)結果:治癒率など統計処理(定量化%) (4)統計処理方法:変動要因が2つ以上ある これらを元にエビデンスのある情報をご紹介致します(備忘のために)。 【1、根管治療の成功率(CBE)】 ・初回の根管治療の成功率・・・78〜89% ・再根管治療の成功率・・・・・76〜89% ほとんど変わらないです。 しっかりとした技術の下、感染が除去できれば予後にほとんど差はないという報告です。 ※日本のラバーダムをしない保険の治療は含まれていません。 【2、非外科的根管治療の残存率】・・手術ではなく、通常の根管治療。 ・下顎小臼歯・・・93%残存 ・大臼歯・・・・・88%残存 大臼歯の方が強い咬合がかかるため、歯根破折を起こしやすいのです。 【3、非外科的根管治療の残存率】 ・全残存率:82%残存 ・クラウン装着歯:91%残存 ・クラウン非装着歯:76% 根管治療をした歯は適合の良い被せ物をしてあげた方が予後が良いです。 【4、根尖透過像は根管治療後いつ頃消失するのか?】 ・3ヶ月・・・・<40% ・1年・・・・・60〜70% ・2〜4年・・・80〜90% ・6年・・・・・>95% 中には6年を超えて治癒してくるものもあるということですね。 免疫力の低い方は治す力が弱いです。糖尿など基礎疾患を持つ患者さんは 長くかかります。 【5、根管治療30年後のX線写真上の根尖歯周組織の変化】 ・根尖病変が消失:6.4% ・根尖病変が出現:1.5% しっかり治療していればそう簡単には病変はできません。100人中1.5人 免疫力が正しく働いてないと骨を作る力も低いので、なかなか病変が消えないことも。 【6、根管治療後に根尖病変の出現】 ・顕微鏡を使用(専門医)・・・・・・26% >2.5年(調査期間) ・顕微鏡を使用しない(一般GP)・・・73% Khalighnejad 2017 【7、MTAによる穿孔封鎖成功率 】 ・骨縁下の穿孔封鎖であれば98〜100% 骨縁上では使ってはならない。血液供給がない。 【8、根管治療予後不良要因 】標本数702歯(初回),750歯(再根管治療) ・ガッタパーチャ(GP)突き出し根管充填の予後は悪い GP根管充填(初回) ぴったり:85.8% アンダー:74.3% 突き出し:67.1% GP根管充填(再治療) ぴったり:84.6% アンダー:64.8% 突き出し:61.8% ガッタパーチャで根管充填する場合、ぴったりが一番予後が良いが、 オーバーよりはアンダーの方がまだ予後は良い。 ちなみにMTAによる根管充填は 初回:100% 再治療:75% International Endodontic Journal(2011) 【9、根管治療予後不良要因 】 根管充填した歯に速やかに支台築造または歯冠修復をしないで 何も入れない:37.5% 仮封のみ:57.9% 修復物や補綴物に隙間がある:69.6% と根管治療の成功率が下がる。 必ずバクテリアは歯冠側から侵入する。どんなに素晴らしい根管充填をしても 予後が良くない。様子を見る場合は築造や修復をし、咬合させない。 【10、CTとX線写真での外科的歯内療法成功率評価 】 成功率 93.3%(X線写真) 85%(CBCT) MTAとBC RRMとの有意差なし(MTA:86%,RRM:84%) 成功率に影響を与えるもの ・逆根管充填材の緊密性と長さ(2.5mm未満だと予後に影響) ・歯周病の有無 ・歯根破折の有無 【11、外科的歯内療法の残存率 】 ・78.3%:治癒率(〜9年) ・95.2%:残存率 ポイントは・・・ 外科処置前に再根管治療をしている方が外科的歯内療法の成功率は上がる。 再根管治療なしでの治癒率は74.6%再根管治療をしていれば85.7%まで上がるので、 「臭い物に蓋をする」的な外科処置ではない方がいい。 いつかは時間と共に逆根管充填材のバリアが崩されて再発(後戻り)が起こるので、 被せ物を外させて頂いて、通常の再根管治療を行い、 どうしても治癒しない場合に外科をした方がいい。 また追加していきますね。 |
上の写真は私が所属するスタディーグループでの噛み合わせの勉強をしている時に 何人もの歯科医師の歯の写真を撮る機会があったのでお見せします。 術者である多くの歯科医師は、自分の奥歯を治療する際、 白いセラミックなどではなく、被せ物や詰め物にはPGA(白金加金)という金属を 使用しているのがわかりました。 やはり、硬すぎず、生体安定性に優れ、精度が高い良質な金属です。 健康で安全な状態を長期間維持することを考えている歯科医師はこの金属を使用します。 ここに私のお口の写真はありませんが、自分の場合も左側の治療したところに詰められた 金属2本はやはりPGA(白金加金)です。 セラミックならまだしも、保険の被せ物に使用される金属。 原因不明の皮膚アレルギーの7割は この金属が原因である可能性が高いと言われています。 患者さんには「自分や自分の家族にしてあげたい治療」を行うようにしていますので、 白い歯もできますが、奥歯を治療する際はPGA(白金加金)をおすすめしています。 |
〜子供の頃からしっかりとした噛み合わせにしてあげるメリット〜 噛み合わせが将来に大きく関わることをご存じですか? しっかりとした噛み合わせがとても重要なことは皆さんよくご存じのことだと思いますが、 なぜ重要なのかの理由まではあまり知られていません。しっかりした噛み合わせがどれだけ 今後の人生の質を高めるのか。 なぜしっかり噛むのが大切なのでしょうか? ・しっかり噛み砕けるので、胃などの消化器官に負担をかけない。 ・唾液が多く出て、虫歯や歯周病など、色々な病気を防いでくれる。 ・しっかり噛むことで脳の血流が良くなり、学力アップにつながる。 ・しっかり噛むことで顎の成長が促され、歯がきれいにならぶ。 ・体のバランスが整い、姿勢が良くなる。 蛇足ですが、 ・年老いてからの認知症の発症率がしっかり噛める人の方が優位に低い(義歯同士でも可ですが)。 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係です。 これは文科省のHPから借りてきたものですが、小中学生において、 朝食を毎日食べているグループの方が平均正答率は優位に高いですね。 ちなみに、全国体力・運動能力・運動習慣等の調査においても、 朝食を毎日食べているグループの方が体力合計点は高いです。 子供のうちから、均等に上下の歯が当たるように矯正治療等でしっかり正常咬合に誘導してあげることで多くのメリットがあるのがわかりますね。 そのままいい噛み合わせの状態で過ごせれば、老いてからも健康でいられます。 人生の質を考えると、歯並び、噛み合わせは大きな役割を担っています。 |