当院の虫歯治療は主に自由診療で行なっておりますが、一体何が違うのでしょうか? ちょっと整理したいと思います。 歯科材料だけで自由診療になるわけではありません。 【1,温度上昇に対して】 歯を削ると、昔の歯医者さんでは焦げ臭いニオイがしたのを覚えています。 これは歯を切削する際、過熱し、温度上昇しているものと思われます。 ちなみに、歯髄内の温度を10℃上げてしまうと、歯髄(神経)は60%壊死してしまうという報告があります。 私の所属するスタディーグループでも、各歯科医が使用している歯科ユニットのメーカーと注水量を各自計測し、比較をいたしました。 当院でも使用しているKaVo社の歯科ユニットですと注水量は80〜110cm3/minでした。 上の表からも80cm3/minではほとんど温度上昇が見られません。 国産のメーカーを所有しているDr.もおりますが、25〜40cm3/minでした。 (これがダメというわけではなく、アシスト側からのスリーウェイシリンジで適宜冷却するなど、ちょっとした努力を行えば全く問題ないと思います) これが現実です。 当院ではKaVo社さんのE80を使用して日常診療しておりますが、歯髄を温存することが前提の歯科ユニット(診療台)ですので、歯髄(神経)に優しい治療が行なえます。 また、ただ冷やせばいいというわけではなく、限りなく37℃に近い温度で削ることが大切です。 【2,時間】 麻酔をすると貧血状態になります。血流がもとに戻るには12分かかります。 (12分待たないとダメ) 一般的には血流が元に戻るまでは治療を進めてはなりません(血流で冷却できないから)。 痛みを感じるうちに歯を削ってはいけません。痛覚閾値が下がってしまいます。 (後から追い麻酔をしてもダメです) 【3,プレパレーションの仕方(削り方)】 1,ハーゲンポアズイユに法則 象牙細管の半径が2倍になると、細管を通して流れる内容量は16倍に増える。 2,象牙細管の太さと割合 ・象牙質ーエナメル質境界付近の直径:0.6〜0.9μm・・・・・細い水道管 ・象牙質ー歯髄境界付近 :1.7〜2.8μm(約3倍)・・・・土管 ∴歯髄腔に近い側ではダメージを受けやすい 3,部位による象牙細管 @象牙ーエナメル境付近の細管数:1万〜2.5万 A象牙ー歯髄境付近の細管数:5万〜90万 (つまり5〜40倍) 歯髄に近くなるほど、著しく象牙細管の数の割合と、直径と、内容液の移動量が増加します。 象牙質の窩洞形成、プレパレーションは歯髄の一部を削っているようなもので、 実態としては露髄に近いのです。 それを露髄と考えるなら、何らかの方法でその表面をコーティングし、刺激を遮断して、内部を保護する必要がありますので、コーティング処置を行うようにしています。 【4,音波による振動切削】 虫歯部分を取る際、象牙質内では必要以上に健全歯質を削らないようにするため、 また歯質に不要な傷、刺激を与えないようにするため、大量の水流下でソニックフレックスによる振動切削にて虫歯の除去を行います。 虫歯部分は染め出し液(虫歯部分だけ染色)やダイアグノペン(レーザーによる虫歯検知器)を使用し、取り残しがないか精査しながら、感染歯質の除去を行なっております。 かゆいところに手が届くようなありがたい器具です。 【5,咬合を配慮した予防的な形成デザイン】 これは右下の奥歯でよく見かけるインレー修復です。 上の歯がこの銀歯のところに噛み合うのですが、顎を前に動かすと青の矢印、 噛み癖が左側の場合、右下の奥歯が徐々に動き、紫の矢印のところを矢印とは逆の方向に 逆撫でします。 この歯の上の歯が噛み合ってこれらの矢印のところをキリキリ擦るので、 歯が欠けたり、痛みが出たり、歯を磨いているにもかかわらず、虫歯が頻発したりします。 例えば こんな形でキリキリ擦るので 外してみると、中は黄色い境目の線のところから虫歯になり、ヒビも入っています。 これはまた別の患者さんですが、こんな風に上の歯の通り道に詰め物の境目を設定すると、減るばかりではなく、歯が割れてしまうこともあります。 こんな風に割れてしまいましたので、抜歯せざるを得ません。 大学では教わらない原則があり、 「通り道にインレーの辺縁をおいてはいけない!」のです。 つまり通り道は同一素材で修復しなければなりません。 この原則を守らないと、抜歯までは行かないまでも、再度虫歯になってしまう可能性が高くなります。ですので、当院では大学で教わるG.V.Blackの窩洞分類に沿ったインレー修復はほとんど行いません。 まずはどうしてそのようになったのか、原因を追求し、それを踏まえて長持ちさせるデザインでのセラミックか、ジルコニア、白金加金の補綴物を作製しています。 |